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組織を崩壊させる標的型メール攻撃~IPA10大脅威から読み解く対策の重要性~

目次[非表示]

  1. 1.なぜ、メールが依然として「最大の脅威」なのか?
  2. 2.IPA10大脅威2025から読み解く標的型メールの関連性
    1. 2.1.脅威の複合化:標的型メールは「侵入の鍵」
  3. 3.人為的ミスが招く致命的な被害と対策の限界
    1. 3.1.巧妙化する攻撃と防ぎにくい「騙し」
    2. 3.2.被害の深刻化:不可逆的なデータの損失と賠償リスク
  4. 4.技術だけでは不十分!メール訓練と体験型教育の不可欠性
    1. 4.1.メール訓練(シミュレーション)で「リアルな脅威」を体験させる
    2. 4.2.体験型セキュリティ教育で「行動変容」を促す
  5. 5.セキュリティ対策は「継続的な投資」である

なぜ、メールが依然として「最大の脅威」なのか?

「情報セキュリティ10大脅威 2025【組織編】」のランキングが示す通り、ランサムウェアサプライチェーン攻撃といった大規模な脅威が上位を占めています。

しかし、これらの高度な攻撃の多くは、実は非常にシンプルな方法、すなわち「標的型メール」を起点としています。
最新のセキュリティ製品を導入しても、攻撃の成功率を左右するのは、従業員一人ひとりの「判断」です。

本記事では、標的型メールがどのように組織の重要インフラを脅かすのかについて、IPAの脅威情報から解説し、人為的なミスを防ぐための「メール訓練」「体験型セキュリティ教育」の不可欠性について、詳細に掘り下げていきます。

IPA10大脅威2025から読み解く標的型メールの関連性

標的型メールはそれ自体が最終目的ではなく、組織内部にマルウェアを侵入させたり、人を騙したりするための「最初の侵入経路(攻撃の起点)」として悪用されます。
2025年のIPA10大脅威「組織編」において、標的型メールが深く関連する主要な脅威は、次の4項目にのぼります。

 期間

内容

目的

 1位

ランサム攻撃による被害

主要な感染経路

業務メールを装い、悪意ある添付ファイル(マクロ付き文書など)や、マルウェアをダウンロードさせるリンクをクリックさせることで、ランサムウェアに感染させる

 2位

サプライチェーンや委託先を狙った攻撃

侵入の「踏み台」として利用

セキュリティ対策が手薄な取引先の従業員を標的型メールで感染させ、その信頼関係や接続経路を利用して最終的な標的組織(自社)への侵入を試みる

 5位

機密情報等を狙った標的型攻撃

攻撃手法そのもの

特定の組織の機密情報を盗むことを目的に、極めて巧妙に作成された偽メールを通じてマルウェアを侵入させ、情報を窃取する

 9位

ビジネスメール詐欺(BEC)

攻撃の主体

取引先や経営層になりすましたメールを送信し、「請求書の振込先変更」や「緊急送金」を指示

人の心理的な隙を突き、金銭を騙し取るための典型的なメール悪用パターン

【出典】独立行政法人情報処理推進機構「情報セキュリティ10大脅威 2025」をもとに作成

https://www.ipa.go.jp/security/10threats/10threats2025.html

脅威の複合化:標的型メールは「侵入の鍵」

この関連性からわかるのは、標的型メールの対策は、単に「5位の脅威」を防ぐことではなく、「1位のランサムウェア」や「2位のサプライチェーン攻撃」といった複合的な大規模被害を防ぐための、最初の防御壁であるという点です。

メール対策を怠れば、組織は複数の上位脅威に対して常に無防備な状態に置かれます。

人為的ミスが招く致命的な被害と対策の限界

攻撃者が最新のシステムではなく「人」を狙うのには理由があります。

それは、どんなに強固な技術的な防御も、従業員が「クリック」ボタンを押す一瞬の判断ミスによって無効化されてしまうからです。

巧妙化する攻撃と防ぎにくい「騙し」

標的型メールは年々巧妙化しています。

AI技術の進化により、攻撃者はターゲット組織の業務内容や人間関係を詳細に調査し、違和感のない自然な文面で偽装メールを作成します。

  • 件名の緊急性
    「パスワード更新の義務化」「未払いの請求書」「至急確認をお願いします」など
  • 差出人の偽装
    社内の上司、取引先の担当者、IT部門のシステム管理者など

これらのメールは、業務に追われる従業員の心理的な隙を突き、「これは本物だ」と信じ込ませる力が非常に高まっています。

被害の深刻化:不可逆的なデータの損失と賠償リスク

標的型メールによるマルウェア感染は、ランサムウェアへと直結し、組織全体のデータが暗号化される、あるいは盗み出されてしまいます。

その結果、業務停止復旧のための巨額なコスト、そして情報漏えいによる顧客への賠償リスクという、組織の存続に関わる致命的な結果を招きます。

技術だけでは不十分!メール訓練と体験型教育の不可欠性

技術的な防御(メールフィルタリング、EDRなど)を施すことは当然ですが、最終的な防御を担う「人の能力」を高めることこそ、最も費用対効果の高い対策となります。

メール訓練(シミュレーション)で「リアルな脅威」を体験させる

メール訓練の最大の目的は、座学では伝わらない「攻撃のリアルな恐怖」を従業員に体験させることです。

  • 意識の劇的な向上

    模擬攻撃を「自分事」として体験することで、「自分は騙されない」という過信を打ち破り、日常業務におけるセキュリティ意識が劇的に向上します。

  • 不審点を見抜く実践能力の強化

    実際の業務メールに近い偽装メールに触れることで、件名や差出人のアドレス、添付ファイルの拡張子など、不審な点を見抜く実践的なリテラシーが身につきます。

  • インシデント対応の訓練

    誤ってクリックしてしまった場合に、「すぐにIT部門に報告する」という正しい行動手順と報告ルートを確立するための絶好の機会となります。

    訓練後の対応フローを検証することで、実際の有事における初動対応の迅速化が図れます。

体験型セキュリティ教育で「行動変容」を促す

標的型メール対策は、単発の知識付与で終わらせてはいけません。

セキュリティを「面倒な作業」ではなく「当たり前の習慣」にするための行動変容を促す教育が必要です。

  • BEC事例研究とロールプレイング
    BECは技術よりも心理戦です。
    実際のBECの事例を題材にディスカッションを行い、経営層や取引先になりすます攻撃者の「だましの手口」を深く理解させます。
  • パスワード管理や多要素認証(MFA)の「実践」
    知識の伝達に留まらず、MFAを実際に利用させるなど、従業員に「安全な行動」を習慣づけるためのハンズオン(体験)型の教育を取り入れることが重要です。
  • 「報告の文化」の醸成
    従業員が失敗や疑念を抱いた際に、罰則を恐れることなく、すぐにセキュリティチームに報告できる心理的安全性の高い組織文化を醸成することが、被害の最小化につながります。

セキュリティ対策は「継続的な投資」である

IPAの10大脅威ランキングが示す通り、標的型メールを起因とする脅威は依然として組織を揺るがす最大のリスクです。
システムへの技術的な投資と並行して、従業員の意識と行動を変えるための「メール訓練」と「体験型教育」は、最も費用対効果が高く、かつ組織の防御力を直接的に引き上げる「継続的な投資」です。
組織を未曾有の脅威から守り、安定した事業継続を達成するためにも、この「人的防御」の強化に、すぐにでも取り組む必要があります。

セキュリティア推進部
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