
「知っている」だけでは足りない?~座学と体験型教育の違いを考える~
組織においての教育や研修といえば、座学やeラーニングが定番となっています。
講義を聞いたり、動画を見たり、テストを受けたりと、確かに効率よく知識を伝えるには便利な方法です。
でも、ふと考えてみてください。
「知っている」ことと「できる」ことって同じでしょうか?
今回は、座学・eラーニングと体験型教育の違いについて、実際の教育効果や行動変容の観点から掘り下げてみたいと思います。
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座学・eラーニングは“知識”を届ける手段
まずは、一般的な座学やeラーニングの特徴を整理してみます。
項目 | 内容 |
受講スタイル | 講義、動画視聴、テキストベースなど受動的 |
主な目的 | 知識の習得(What) |
受講者の関与 | 低い(聞く・読むが中心) |
理解の深さ | 表面的な理解にとどまりやすい |
行動変容 | 起こりにくい(知識と行動が結びつきにくい) |
評価方法 | テストやアンケートなどの形式的な確認 |
座学やeラーニングは、短時間で多くの情報を伝えることができる反面、受講者が受け身になりがちです。
知識は得られても、「それをどう使うか?」「なぜ重要なのか?」といった深い理解にはつながりにくいのが現実です。
体験型教育は“気づき”と“行動”を生む
一方で、体験型教育はアプローチがまったく異なります。
項目 | 内容 |
受講スタイル | 疑似体験、ロールプレイング、シミュレーションなど能動的 |
主な目的 | 気づきと行動変容(Why & How) |
受講者の関与 | 高い(自ら考え、判断し、行動する) |
理解の深さ | 実感を伴う深い理解が得られやすい |
行動変容 | 起こりやすい(自分ごとと捉えやすい) |
評価方法 | 行動ログ、フィードバック、振り返りなど実践的な指標 |
体験型教育では、受講者が自分の判断で行動し、その結果を振り返ることで「気づき」を得ます。
失敗も含めて体験することで、「なぜそれが重要なのか?」「どうすればよかったのか?」を自分の言葉で理解できるようになるのです。
両者の違いを比較してみると・・・
観点 | 座学・eラーニング | 体験型教育 |
受講者の姿勢 | 受動的 | 能動的 |
学習の深さ | 表面的 | 実感を伴う深い理解 |
行動への影響 | 弱い | 強い(行動変容が起こりやすい) |
評価方法 | テスト中心 | 実践的なフィードバック中心 |
このように、体験型教育は「自分ごと」として捉えることができるため、特にセキュリティ教育やコンプライアンス教育など、実際の行動が求められる分野において非常に有効です。
セキュリティ教育こそ、体験型を
情報セキュリティの分野では、「知っている」だけでは不十分です。
たとえば、標的型攻撃メールへの対応は、知識だけでなく、実際にどう判断し、どう行動するかが重要です。
最近では、マルウェア感染を疑似体験できるトレーニングや、実際の攻撃メールを模したロールプレイング型の教育も登場しています。
こうした体験型の教育では、誤操作を”あえて体験”させることで、危機感や注意力を高めることができます。
また、開封率などの形式的な数値ではなく、実際の行動ログやフィードバックをもとに評価することで、より実態に即した教育効果の測定が可能になります。
学びを“行動”につなげるには?
座学やeラーニングは、基礎知識の習得には有効です。
しかし、行動変容を促すには限界があります。
一方、体験型教育は、受講者の能動的な関与を促し、実感を伴う深い理解と行動変容を実現します。
特にセキュリティ教育のように「行動」が求められる分野では、体験型教育の導入が不可欠です。
これからのセキュリティ教育では、座学やeラーニングと体験型教育を組み合わせた「ハイブリッド型」の学習モデルが求められます。
「知っている」だけで終わらせず、「できる」まで育てる教育が、これからのセキュリティ教育の鍵になるでしょう。