
「気づき」と「実感」で変わるセキュリティ教育~メール訓練 × セキュアプラクティスの併用設計事例~
企業の情報セキュリティ対策は、技術だけでは守りきれない時代に突入しています。
サイバー攻撃の多くは、従業員の“うっかり”や“誤操作”が引き金となり、重大なインシデントへと発展します。
そのため、セキュリティ教育の目的は「知識の付与」から「行動の変容」へとシフトしています。
今回は、標的型攻撃メール訓練と体験型教育ツール「セキュアプラクティス」を組み合わせたトレーニング設計事例をご紹介します。
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メール訓練の限界と課題
メール訓練は、標的型攻撃メールを模した訓練メールを従業員に送信し、開封率や通報率を測定することでリスク感度や対応力を可視化する手法です。
多くの企業で導入されているこの訓練ですが、以下のような課題が指摘されています。
開封率の偏重
訓練の評価が「開封したかどうか」に偏りがちで、開封しなかった人には教育が届かないという問題があります。
結果として、教育対象が限定されてしまい、組織全体の底上げにはつながりにくいのです。
訓練疲れとマンネリ化
同じような訓練メールが繰り返されることで、従業員の関心が低下し、「またか・・・」という訓練疲れが生じます。
これにより、訓練の効果が薄れ、セキュリティ意識の向上につながりにくくなってしまいます。
実際の攻撃との乖離
訓練メールが「いかにも怪しい」文面で構成されていると、現実の攻撃メールとのギャップが生まれてしまいます。
最近では、自然な日本語で構成された巧妙な攻撃メールも増えており、訓練が現実に即していないと、実際の攻撃に対応できない可能性があります。
セキュアプラクティスが補完するもの
セキュアプラクティスは、ロールプレイング型の体験型教育ツールで、従業員が「誤操作をあえて体験」することで、実感を伴った学びを得ることができます。
メール訓練の課題を以下のように補完します。
メール訓練の課題 | セキュアプラクティスによる補完 |
開封率の偏重 | 全従業員が対象のため、開封しなかった人にも教育が届く |
訓練疲れ | 毎年新しいシナリオが追加され、飽きさせない設計 |
リアリティ不足 | 実際の攻撃メールを模した疑似感染体験で危機感を醸成 |
行動変容の弱さ | 誤操作を通じて「自分ごと」として学び、行動が変わる |
セキュアプラクティスでは、誤操作をしないとシナリオが進行しない設計になっており、失敗を通じて「なぜその操作が危険だったのか」を自ら考える構成になっています。
これにより、単なる知識ではなく「行動の変化」を促します。
併用によって得られる教育効果
メール訓練とセキュアプラクティスを併用することで、以下のような効果が期待できます。
- 教育対象の拡張メール訓練で漏れた層にもセキュアプラクティスでアプローチ可能
- 行動変容の促進開封してしまった人に対して、感染体験を通じて危機意識を高める
- 教育効果の可視化開封率や通報率に加え、行動ログによる定性評価が可能
- 継続的な改善訓練結果をもとに、次回のシナリオや教育内容を調整できる
実施設計事例(3ヶ月モデル)
以下は、メール訓練とセキュアプラクティスを組み合わせた教育設計の一例です。
期間 | 内容 | 目的 |
第1週 | オリエンテーション(座学・動画) | セキュリティの基本知識を共有 |
第2週 | 第1回メール訓練 | 開封率・通報率の測定、初期リスク感度の把握 |
第3週 | セキュアプラクティス(疑似感染体験) | 誤操作の体験と行動ログ取得、危機意識の向上 |
第4週 | フィードバックセッション | 行動ログの共有、改善ポイントの明確化 |
第5~8週 | 第2回メール訓練(難易度調整) | 前回の結果を踏まえた再訓練、行動変容の確認 |
第9週 | セキュアプラクティス(別シナリオ) | 新たな攻撃パターンへの対応力強化 |
第10週 | ケーススタディ研修 | 実務に即した判断力の育成 |
第11~12週 | 最終評価・アンケート | 教育効果の定量・定性評価、次回設計へのフィードバック |
この設計では、メール訓練の「気づき」を起点に、セキュアプラクティスで「実感」を伴う学びを提供し、最終的に行動変容を定着させることを目的としています。
実施事例(企業名非公開)
ある企業では、メール訓練だけでは初動対応が遅れるという課題がありました。
開封率は高かったものの、通報率が低く、実際の対応力に課題が残っていたのです。
そこで、セキュアプラクティスを導入し、メール訓練で開封してしまった従業員に対して感染体験を提供する設計に変更。
結果として、次回のメール訓練では通報率が大幅に向上し、IT部門への問い合わせ件数も減少しました。
また、別の企業では、標的型メール訓練とセキュアプラクティスを組み合わせた教育設計を導入し、専門メディアの立ち上げや継続的な教育体制の構築が進められています。
教育が“イベント”ではなく“文化”として根付くことで、組織全体のセキュリティレベルが底上げされました。
「気づき」と「実感」で行動が変わる
セキュリティ教育は、単なる知識の伝達ではなく、社員の行動を変える「仕組みづくり」が求められています。
メール訓練の「気づき」とセキュアプラクティスの「実感」を組み合わせることで、従業員のリスク感度と対応力を段階的に高めることが可能です。
「知っている」だけでは守れない時代に、「できる」社員を育てるための教育設計こそが、メール訓練とセキュアプラクティスの併用によって実現できる未来です。


